丁寧な家づくりを考える
㈲西本地所に勤務する宅建士の村上です。
資格は「宅建士」等の家造りの専門では無いものしか所持していません。
不動産業界は賃貸10年、売買4年のキャリアとなります。
家づくりに関しては関西より北の工務店が発信する情報を主として学んでいる状況です。
どちらかといえば、素人よりの目線ですが、考察していきます。
丁寧な家づくりとは
『丁寧な家づくり』と聞いて想像するのは、
しっかりしていて(性能)、キレイ(意匠・納まり)な状態を想像するかと思います。
しかし、家を建てる方達のブログを見てみると結構難しいようです。
どこで建てても普通にしっかりしてキレイに建てられるんじゃないの??
私もそう思っていましたが、ダメな場合も有るみたいです
頼む会社が重要
家づくりは沢山の人が関わる一大事業です。
- 工務店
- ハウスメーカー
- 設計事務所
などの依頼先が有りますが、自社で全てを行う会社はまず有りません。
計画段階で、設計士さん、IC(インテリアコーディネーター)さん、営業さんなどなど
実行段階で、大工さん、電気屋さん、板金屋さん、左官屋さん、設備屋さんなどなど、多くの人が関わります。
皆がレベルが高く、確認を怠らず造ればイイ家が造られます。
ふーん、結局どこで建てたらいいの?
皆さんソコで悩まれております。
どこで建てても良い家になるなら良いんですけどね。
会社によって知識・技術の差が有って、家にも差が出ます。
ハウスメーカー・工務店・設計事務所
ここからは、依頼先の傾向を独断と偏見でお伝えします。
同じ「工務店」といっても「良い工務店」、「悪い工務店」と有ります。
身も蓋もない言い方をすると、結局は人次第です。が、傾向は次の通りです。
😀良い点
- 安心感(倒産しにくい)
- スムーズ(マニュアルしっかり)
- アフターサービス
😫悪い点
- 高い(展示場・営業・広告費用が加算)
- 工事は下請け(忙しい時はハズレ職人の場合も)
- 担当が新人の場合、提案が無かったりする
価格 | ★★★★★ | 人件費、広告費が加算し当然に高い | ✕ |
性能 | ★★★★★ | 自社開発や研究をしっかりしている | ○ |
施工 | ★★★★★ | 下請け業者次第で変動する | △ |
意匠 | ★★★★★ | 商品開発部が研究 | ○ |
このハウスメーカーは「大手ハウスメーカー」とします。
ローコストメーカー、FCメーカー、新興メーカーなどは除きます。
ハウスメーカーは施工以外は安定しています。下請け業者次第でしょう。
😀良い点
- 安い(ムダな人件費、広告費がない)
- 技術に自信あり
- 近いので対応早め
😫悪い点
- ダサい(ICが居ない場合が多い)
- 時間がかかる(営業が居ない場合が多い)
- 提案が無い(職人さんは話が苦手)
価格 | ★★★★★ | 材料費と工事費だけで安い | ○ |
性能 | ★★★★★ | ずっと同じものを使う | △ |
施工 | ★★★★★ | 自社大工や同じメンバーでやるので高い | ○ |
意匠 | ★★★★★ | 任せるとダサい場合が多い | ✕ |
この工務店は「施工特化工務店」とします。
下請け特化工務店、不動産型分譲工務店、意識高い工務店、古臭い工務店は除きます。
設計士は外注、技術力は高い。施主の知識が豊富ならおすすめ。
😀良い点
- かっこいい
- こだわりのデザイン
😫悪い点
- 性能低め(デザインと機能性が反する部分)
- 設計士さんのこだわり優先(作品として)
- アフターサービスは施工業者任せになる
価格 | ★★★★★ | 設計料として加算 | ✕ |
性能 | ★★★★★ | 性能よりデザイン優先 | ✕ |
施工 | ★★★★★ | 同じ下請けが多く高め | ○ |
意匠 | ★★★★★ | もちろん最高 | ○ |
この設計事務所は「デザイン重視の設計事務所」とします。
性能重視の設計事務所(ほぼ居ないですが)は除きます。
デザインは最高です。これが他に劣る様でしたら存在価値が無いです。唯一無二の家が欲しい場合はおすすめ。
※評価は村上の独断と偏見です。
工務店が良いみたいな書き方だね
意識高い工務店を見つけられるなら最高です。
逆に古臭い工務店に当たると最低の家になるでしょう。
あ~、ブログで見た欠陥住宅を建てておきながら逆に裁判してきた工務店とか有ったね
数千万円掛かって欠陥住宅は嫌ですね。
住宅は家電製品と違って、製造側のレベルがバラバラで
高い金額を出せばいい家になるとも限らないのが難しいところです
大変ですが、施主が勉強して知識を得る必要が有ります。
家づくりのパートナー
パートナーを決める際に「担当者との相性」で決めた!という方も居ますが、
できれば家(性能・デザイン)で選んで欲しいと思います。
担当(打ち合わせ期間|3ヶ月~2年程)より家(住む期間|10年以上)です。
家と大工は車と運転手の様なもの
家づくりは多種多様なパーツを使って建てられます。
わかりやすく比較できる様、いろんな数値が有ります。
代表的な家の性能値で「UA値(外皮平均熱貫流率)」というものがあります。
朝日ファイバーグラス
ざっくり言って「断熱性能」だと思って下さい。※数値が低い方が良い
同じ数値でやっても施工する人(大工さんなど)の技術・知識の差により
出来上がりに差が出てきます。(快適さは色々な性能が影響してきます)
数値は机上の計算です
正確な施工が出来たならの数値となります
良いものを使っても職人さん次第で台無しにも素晴らしくもなります
家と職人の組み合わせ
良い家(性能高い家)と良い職人(知識と腕がある職人)の組み合わせが理想ですが
良い家は高いですし、良い職人は探すのが難しいです。
せめて普通の家と普通の職人さんレベルの家は欲しいところですね。
昔の職人さんに多いですが、
腕は確かなんですが知識が古く
気密・断熱・換気・透湿の重要性が分からない方は多いです
構造(木工事)は抜群ですが機密・断熱工事は適当です
長持ちする家ですが、寒くて暑い家になりがちですね
壁内結露で構造がやられたら長持ちもしなくなります
換気は気密が取れてないので計画換気は出来ません
新築するための基礎知識
頼む会社を見極めるために知っておきたい基礎知識をご紹介します。
お金を掛けて欲しい部分
「地盤」~「断熱」までが一生持つ部分になりますので、お金を掛ける価値が有ると思います
リフォームするにも高くなりがちで、なかなかしない部分でもあります
普通は「仕上」「設備」をこだわって選んで
住む時に「家電」を買うよね
そうですね
「仕上」はデザインに
「設備」は利便性につながりますので
余裕が有れば良いものにしたいですね
一生モノの部分の説明
保険を掛けるためと建築基準法で義務付けられているので必ず地盤調査をします。
大体どこもSWS試験(旧 スウェーデン式サウンディング試験)だと思います。
地盤改良の種類
色々種類が有ります。
地盤改良しなくてもOKの場合が一番費用が掛かりません。
基礎は「布基礎」「ベタ基礎」とあり、木造なら「ベタ基礎」一択です。
これに使う鉄筋のサイズや立ち上がりの高さや幅で金額が変わってきます。
構造は木造では主に3種類有ります。
昔からの工法で安くできる。大工の腕が重要。気密・断熱・耐震などの性能が取りにくい。
耐震に優れる。間取りが制限される。
上2つのイイとこ取り。現在は大体がコレ。
筋交い無しのバージョンなら施工もカンタンで性能も出しやすい。
注文住宅なら最後の軸組パネル工法が良いでしょう。
安く建てたいなら軸組工法(在来工法)ですが、職人の腕を要チェックと耐震性が課題です。
性能に直結する大事な部分ですので、ちょっと長いです。
断熱材
主要なものを表にしています。
断熱材 | 熱伝導率 [W/(m・K)] (低い方が良い) | 特徴 |
---|---|---|
グラスウール | 0.033~0.050 | ◎安価 ○燃えにくい(400℃) ○防音効果 ✕防湿対策必須 ✕施工難度高い |
ロックウール | 0.035~0.047 | ○撥水性 ○燃えにくい(700℃) ○防音効果 ✕防湿対策必須 ✕施工難度高い |
セルロースファイバー | 0.038~0.040 | ○気密性が高い ○吸放湿性能 ◎防音効果 ✕高価 |
ポリスチレンフォーム | 0.024~0.043 | ○水に強い ✕気密性 ✕熱に弱い |
硬質ウレタンフォーム | 0.023~0.040 | ○施工性が良い ○熱橋対策 ○気密性が高い ✕高価 |
フェノールフォーム | 0.019~0.036 | ○燃えにくい(500℃) ○水に強い ○気密性が高い ✕高価 |
断熱材の種類はなんでも良いです。それぞれに数値(熱伝導率)と特徴が有ります。
能力としては数値×厚さですので、数値が低くても厚みを出せば問題有りません。
数値が低いもの(グラスウールなど)は厚さを出しても安い場合が多いです。
構造で紹介した工法によって決定すれば良いと思います。
例)軸組工法は筋交い(斜めの柱)を入れるので、グラスウール等より施工性が高い物の方が良い。
例)軸組パネル工法(筋交いなしバージョン)ならグラスウールでも隙間なくキレイに入るのでグラスウールで安く出来る。
同じ断熱性能の厚さ比較
たまに営業で『鉄筋コンクリート造(RC造)なので暖かいです』とか言う方も居ますが、
コンクリートは断熱性能は低いです。蓄熱する性質が有りますので、夏の夜は暑いですが。
グラスウール8.7cm=コンクリート2.4mですので、
断熱材無しRC造とフェノールフォーム10cm木造だと木造の方が断熱性能は上ですね。
※後述する『C値』が優位な場合は多いです。なので、断熱リフォームで高性能にしやすいです。中部屋の場合は北と南のみの断熱で済む場合も多く、安価に断熱リフォームが出来るのも良い点ですね。
UA値
基準 | 5地域 府中市 | 6地域 福山市・尾道市・府中市 |
---|---|---|
平成28年 省エネ基準 断熱等級4(現在の最高等級。。。) | 0.87 | 0.87 |
ZEH基準 断熱等級5(仮) | 0.60 | 0.60 |
HEAT20 G1 | 0.48 | 0.56 |
HEAT20 G2 | 0.34 | 0.46 |
HEAT20 G3 | 0.23 | 0.26 |
上でちょっと触れましたUA値。
地域によって目安があります。
こちらを基準にどのくらいまで目指すかを考えると良いですね。
現在までは等級4が最高でしたが、その数値だと寒く暑いです。
『当社の断熱性能は最高等級です!』って営業にお気をつけ下さい。
今は等級7まで新設するとかしないとかの話が出ています。
おすすめとしてはG1かG2あたりです。
コスパが良いのはZEH以上G1未満あたりです。
気密
気密は大事です!
「断熱」「換気」「エアコン代」「結露」に影響してきます。
そして、他の数値は机上の計算値ですが「気密の数値」は実測値です!
気密測定
外部に穴を空け、気密施工まで出来た段階で気密測定(中間気密測定)をします。
※この段階ですることによって、悪くても改善工事が出来る。
これで分かる数値がC値(相当隙間面積)です。※低い方が良い
C値は最低1.0以上は欲しく、高気密は0.5あたりからです。
※建築基準法の換気システムが機能するための最低限な気密値=1.0
当社は高気密・高断熱住宅です
UA値とC値はどのくらいですか?
断熱等級で最高等級です。
モデルハウスのC値は0.5です。
ネコの質問はいい質問ですが、ここで注意したいのは2点です。
まずUA値の最高等級は0.87ですので、暖かく無いです。
良い数値の場合なら数値で言うかUA値で紹介した○○基準で言います。
例)『0.46です』『G2グレードです』など
C値についてはいつも計測しているか、どの段階で計測しているかまで聞きたいですね。
例えば、壁に穴を空けてない状態(配線・配管前)での数値だったり、
モデルハウスだけ計測するので特別仕様(オプション)だったりで
いつもは数値が悪い、または計測していない可能性も有ります。
気密測定はしていない業者の方が多いです。
高気密・高断熱と言ってて気密測定をしていない業者は詐欺ですね。
透湿
壁内結露を防止するために断熱材や工法によってやり方が変わります。
一般的にはシートか面材にその性能を持たせます。セットで外壁側に通気層を設けます。
換気
建築基準法で換気が義務付けられています。
健康のために換気をしましょうという趣旨で、気密が高いと計画通りできます。
住宅は主に「1種換気」「3種換気」のどちらかを設置して換気を行います。
ダクト式、ダクトレスといった種類が有ります。
ダクト式は配管で各部屋につなぎ、1つの機械で換気を管理します。
ダクトレスは居室毎に換気が完結します。
熱交換式の機械も登場してきており、温度変化を抑える事ができます。
湿度にも対応するものも有ります。
窓
住まいの中で、熱の出入りが一番大きいのは「窓」!!
ということで、とりあえず性能は「窓」にお金をかけましょう。
おすすめ仕様
【サッシ】 アルミ → アルミ・樹脂複合 → 樹脂
【ガラス】 シングル → ペア → Low-Eペア → Low-Eトリプル → Low-Eクアトロ
【中空層】 空気 → アルゴンガス → クリプトンガス → 真空
【スペーサー】 アルミ → 樹脂
YKK-apなら「APW」LIXILなら「エルスター」の窓がオススメです。
玄関
YKK-ap「玄関ドアの教科書」より
玄関も同様に熱の出入りが激しい部分です
窓だけ高スペックで玄関は低スペックの断熱能力にならない様にご注意ください。
オススメは「D2」「K2」で余裕が有れば「D50」「K1.5」です。
メーカー | 仕様と熱貫流率(W/㎡K) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
YKK-ap | 仕様・商品名 | D4 | D3 | D2 | D50 | D70 |
熱貫流率 | ~4.07 | ~3.49 | ~2.33 | ~1.92 | ~0.9 | |
LIXIL | 仕様・商品名 | K4 | K3 | K2 | K1.5 | ハイグレード仕様 |
熱貫流率 | ~4.07 | ~3.49 | ~2.33 | ~1.75 | ~0.89 |
まとめ
◆長く住む家ですので、担当の人柄より家の性能で選びましょう
◆家の性能も大事ですし、作る人も凄く大事です
◆基礎部分と性能部分にお金をかけましょう
◆高い買い物ですので、勉強しましょう
残念ながら、悪い話も多い住宅業界ですので、
家族とご自身の満足度のためにも知識を入れて、
騙されないようにイイお家を建てて下さい。
最近は情報も豊富ですので、勉強しない専門家より
施主の方が詳しいって事も有りえますので、
頑張って下さい。
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